環境世界

・・・したがって、環境世界には純粋に主観的な現実がある。環境の客観的現実は、けっしてそのままの形で環境世界の中に現れるのではない。客観的現実は、つねに知覚標識あるいは知覚像に変化し、作用のトーンを与えられる。そしてこのトーンは、刺激それ自体のなかにはまったく存在しないにもかかわらず、客観的現実はそれによってはじめて現実の対象物となるのである。

そして最後に、単純な機能環は、知覚標識と作用標識がともに主体の表現であり、機能環の含む客体の性質は単にそれらの標識の担い手の働きをしているに過ぎないということを我々に教える。

こうして、あらゆる主体は、ただ主観的現実のみが存在し、そして環境世界のみが主観的現実である世界に生きているという結論に到達するのである。

主観的現実の存在を疑うものは、自分自身の環境世界の基礎を認識していないのだ。


ヤーコプ・フォン・ユクスキュル 「生物から見た世界」第十二章から

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